「離してください…っ」
か細い声が聞こえる。

「真尋ちゃんっ」
入り口でバイクを乗り捨てた謙太郎は大声をあげ、GPSの示す公園へと駆け込んでいく。
そして少女の腕を掴み睨みを聞かせている体格の良い男を思いっきり突き飛ばす。

「ってえなぁ?!!」
声を張り上げ、謙太郎に向かう弘輝。
弘輝がよろめいた一瞬の隙に、素早い身のこなしでベンチから離れ二人から距離を取る真尋を庇うような体制で、謙太郎は弘輝の拳を受け止め、そのまま向こうの勢いを利用して武道の動きを応用させる。
瞬く間に、弘輝は地面に転げ、そこに謙太郎が馬乗りになる形ができた。

「うちのお嬢に何してくれてんだ…?」
そう囁いた謙太郎は普段は見せない冷酷な表情をしていた。