話を聞いている間にも忙しなく料理を口に運ぶ。
神宮寺くんの手元にあるしっかり味が染み込んでいそうな豚の角煮を見つめていたら、すかさず差し出してくれた。
なんだかすみませんね、とヘコヘコしながらそれを小皿に取ると、ここで初めてはっきりと彼が笑った。
「それだけ食欲旺盛だと、なんだか全部あげたくなりますね」
「ほぉ〜……」
彼の言葉よりもなによりも、その笑顔につい引き寄せられるようにじろじろ見てしまった。
笑うと目が三角になって、目尻に笑いジワが出来る。
屈託のないくしゃくしゃな笑顔ってわけじゃないんだけど、人懐っこさみたいなものがブワッと溢れ出したのだ。
普段表情の変化が少ないからか、顔に特徴が無いなぁという印象が強かった。
それは、彼の思わぬ一面でくるりと変わった。
舐め回すように見られたためか、笑顔を瞬時に引っ込めた神宮寺くんが身を引きながら迷惑そうに顔を歪める。
「あのー、なんですか?」
「あぁー、もったいない!笑うとなかなか素敵じゃない。合コンでもモテただろうに」
「笑うだけでモテるわけないでしょ」
「なんてゆーか、普段ブスッとしてるからかいい意味で裏切られるよ!」
「はぁ」
全く興味ありません、と聞こえてきそうな返事をされた。