モッツァレラチーズとベーコンがたっぷりのったピザを大きな口でパクッと食べて、咀嚼しながら渚が「ひばりは?」と聞いてきた。

「なんか無いの?男関係」

「あったらとっくに話してるし」

「相変わらずなのねぇ」

「後輩には理想が高すぎるって言われたしさ」

「なにそれ、どんなん?」


興味深げに目を輝かせて私の理想を聞きたがる渚を見て、なんとなく風花ちゃんの姿が思い浮かんだ。
彼女もあの時こんな顔をしていたような。


「包容力ある年上の人で、私好みの俳優みたいな顔で、スーツが超絶似合ってて、無精髭も似合っちゃって、実はマッチョで、タバコを吸う姿が渋い人」

早口で答えたら、言い終わるか終わらないかのところで渚が豪快に「ブッ」と吹き出した。

「あっはは、うんうん、それで?拳銃構える姿がかっこよくて、声がセクシーで、笑顔がクシャッとなる人?」

「………………分かってるんじゃない」

「ドラマ見すぎだよ〜ひばり〜。現実見よ、現実」

「知ってる。後輩に言われたもん。結婚してないとエベレストみたいな理想になるんですねーって、笑顔で」

「痛々しいねー、ほんと」


ワインを水のように飲み干した渚は、むくれる私を面白そうに眺めていた。


いやいや、風花ちゃんにも言ったけど。
あくまで理想は理想。
理想と現実はそううまく折り合わないってちゃんと分かってるつもりなんだけどなぁ。

渚に倣うようにワインに口をつけると、彼女に質問された。


「例えばさ、誰か新たに男の人と出会ったとするよ?その人に連絡先聞かれたら、ひばりは教える?」

「うーん、すぐには教えない……かな」

「そういうところよね、彼氏が出来ない理由」

「どこ?どこにあったの?」

「あんた今何歳だと思ってんのよ」