働く人にとって、休みの前日の夜ほど解放的になることはないと思う。

先週はつまらない合コンで予定を潰してしまったけど、今週は大学時代からの親友である渚とカジュアルなイタリアンレストランで美味しい料理とお酒に舌鼓を打っていた。


「……でさぁ、その新人の子がマジで使えなくて。基本メモとらないわけよ。だから何回も同じ説明しなくちゃならないの。メモ取れって言ったら取ったんだけど、そのメモ無くすんだから!信じられる!?」

「…………分かる。痛いほどに分かるわぁ」


私と同じく独身で、銀行でバリバリ働いている渚は、後輩の指導に当たることが多くなったらしい。
やはりこの歳になると、ただ自分の仕事をこなすだけでは終わらない。
毎年入ってくる後輩にも目を配らなければならなくなるのだ。


強く共感出来る彼女の愚痴に、何度も相槌をうつ。
どこも一緒なんだなあと思いながら。


「でもほら、イライラした時には彼氏にすぐ話とか聞いてもらえるでしょ?どうなのよ、社内恋愛は?」


私の問いかけに渚は肩をすくめて「全然」と答えた。


「彼は融資で私は為替だもの。関わるとしたら電話の取り次ぎくらいよ」

「え、そうなの?てっきり内線でデートの約束したり、社内メールでやり取りしたり、給湯室でイチャイチャしてるのかと思ってた」

「ひばり、ドラマの見すぎっ。ちゃんと家でイチャついてるからいちいち職場でやらないって」

「……あ、そう」


大笑いした渚は、さりげなくラブラブであることのアピールもしている。
付き合って3ヶ月なのだから当たり前といえばそうなのだけれど。


銀行に入行して7年目にして、渚にとっては初の社内恋愛。
ある日突然、先輩行員からずっと好きだったと告白されて付き合うようになったらしい。

この間写真を見せてもらったけど、なかなかのイケメンだった。


お互い独身でも、1歩リードしているのは渚なのだ。