神宮寺くんは受付のカウンターで何かを書き始めたが、受付嬢の2人はどこかの企業からの来客なのかものすごく爽やかなイケメンリーマンとキャッキャと話しをしていて、私たちのことなど見てもいない。
「これどうぞ。あなたも書いてください」
「何を?」
「連絡先」
渡されたレシートの裏に、おそらく彼の携帯の電話番号であろう数字が羅列されていた。
冷静を装いながら受け取った私は、無言で別なレシートの裏に自分の番号を書いて彼に渡した。
「どうも。食事は、たぶん夜しか行けないと思いますけどいいですか?」
「…………うん、いいよ」
「じゃあ、仕事が早く終わった時には連絡します」
私が返事をするよりも先に、彼はその場からいなくなってしまった。
あっという間の、連絡先交換。
こんなにスピーディーでスマートな、しかも下心一切なしの交換は初めてだった。
自分がけしかけたとはいえ、男性と連絡先を交換するのもだいぶ久しぶりのことで。
どれだけこれまでご無沙汰なんだと自分の人生にツッコミを入れたくなってしまった。
8500円分の食事を、彼にご馳走する。
たったそれだけの、小さな約束で繋がった。