Side ShunMatsunaga


『わかんないの…っ』
『真…っまこと…っ』

観覧車の中。
真の名前を呼んで泣き続ける、一人の女。

そいつは昔からずっと一緒にいた、大切な女で。
ずっと泣かせたくなくて笑わせたくて傍にいて、大切にしてきた女。

だけどそれを、あいつを崩すのはいつも俺じゃなくて、あいつ。


―――真だった。


「なんで戻ってきた」

「言っただろ。もう捨てたからだって」

「じゃあなんで俺の邪魔するわけ?」

「別に邪魔なんて」

「過去は“捨てて”きたんだろう?」


泣いていたあいつの手を握っていた反対の手を真は引き、無理矢理連れていく。


いつだって、いつだってそうだ。

こいつは、真は、俺が大切にしていたものを一瞬ですべて奪い取っていく。