真がいなくなって、私と同じくらい泣いていたお母さんの前で泣くことはできなくて。
無理して笑っているお父さんの前で泣くことはできなくて。

どこにも、気持ちを出せる場所のない私にその場所を作ってくれたのも駿で。

『だいじょうぶだよ』

私が泣きたいとき、泣いているとき抱きしめて話を聞いてくれたのも全部、駿だった。

駿は昔からずっと、私のことを支えてくれる真とは違う兄のような存在だった。

「どーした」

「うぅ…っ」

苦しくて、ただ苦しくて。

夕日を見ていた瞳から大粒の涙が零れる。


なにも口にできなくてただ座り込んで。


そんな私の手を、駿はなにも言わずずっと握っていてくれた。