「うおっうまそう」
まだ私の手を離さず握りながら席に着くと三歳児の子供のようにご飯を見る目が輝いている。
「ふふ、おばあちゃんには負けるけどね」
「んなことないよ。俺はかあさんのご飯ずっと食べたかった」
「…もう、朝から泣かせるようなこと言わないの」
お母さんは私たちの茶碗にご飯を盛りテーブルにとんっと置く。
「すわんねえの?」
「え、あ、座るよ」
私の手を離し、お箸に持ち替えた真が私の方を見て言った。
真の声に反応した私は椅子を引いて、その席に座る。
「そういえばまだ席変わってなかったんだな」
「え?」
お味噌汁を飲んでいた私に、漬物をガリガリ口に含んだ真が言葉を放った。
「ここ、俺の席じゃん?」
そういったのは、私の隣の席を指さしていて。
「あー…うん、変わってないよ」
それは、私が変えたくなかった、場所だったから。