「な、…なに」

その声は、もう耳に残るほど聞き覚えのある、声で。

「入っていい?」

「…いいけど。」

私の返事を聞くと、ゆっくりと音を立てて部屋のドアが開いた。

「うわ、真っ暗じゃん」

「なに?なんか用?」

「いや、別に用ってわけじゃないけどさ」

「じゃあなに?」

真っ暗闇の中、まだ目が慣れないのか目の前にいるはずの真の顔が見えない。
どんな顔で私の前に立っているのか、わからない。

だけどこいつは、そんな私とは裏腹に入ってくるなり入口にあった小さなパンダのぬいぐるみを手にした。

「うわー懐かし、これ、心まだ持ってたんだ」

「あ…、」

それは昔、真とお父さんとゲームセンターに遊びに行ったときに―…