その日は、眠れなかった。
文化祭が終わって、家に帰る家路には私一人の姿があって。それは別に駿と顔を合わせるのが気まずいからとかじゃなくて、ただ駿は裏方だったから片付けがあったみたいで。
私も手伝う!って声をかけてはみたんだけど、みんな倒れた時の事を心配してくれて。
渋々カバンを持って帰ろうとした時、後ろから「椎名」と呼ばれ立ち止まるとそこには私をふざけて驚かせた、男の子が震えながら立っていて。
『どうしたの?そんなに震えて』
『本当、ごめん。俺なんて言えばいいか―…』
『えーなにがなにが。そんな気にしないでよ。私がお化け苦手だって言わないで立候補したんだしさ。むしろ楽しんでいた雰囲気台無しにしちゃってごめんね』
後ろから感じる駿の目線に気が付きながらも、私はその男の子に手を振る。
『私、先帰るけど』
『気を付けて帰れよ。襲われないように』
『襲われないよ!』
あんなことが、あったというのにいつも通りの会話ができてて自分でもビックリする。
だけどそれが私と駿なんだ。
何年も築きあげたこの絆は、きっとそんな簡単には切れない。