Side MakotoShina


『いやぁぁあっ』

廊下にまで響き渡ったその声に俺は耳をかざした。その声は聞いたことのある、いや聞き覚えのある大事な大事な奴の声で。

「ごめん、ちょっと」

俺の腕にしがみついていた栞の手を離し俺は後ろに振り返り駆けて行った。

「ごめん通して、」

廊下にはさっきの悲鳴がなんだったのかと騒いでいる連中が道を塞いでいて俺はそいつらの間を通っていく。

「ここっ…」

そしてついた先にいたのは、意識がない心を優しそうに抱きかかえている駿の姿だった。

「駿…」

「保健室、連れてくから話があんなら歩きながら」

「あぁ…」

気を失っているのであろう、心は目を開ける気配もなく駿の腕にずっとしがみついている。
それを見てズキっと痛む、この胸。

捨ててきた、はずなのに。

だけど自分の心は、言うことを聞いてなんてくれなくて。