『お前兄ちゃんに捨てられたんだな』
小学校のころ、真がいなくなったのを境に私に対しいじめが起きるようになって。
なんで真のせいで私がいじめられなきゃいけないんだろう。そう考え学校に行きたくなくなって。
だけど駿はそんな私の手を常に引っ張ってくれて。
『心は、堂々としてていい。俺がいつだって守ってやるから』
小さい手で私の手を握る駿の姿は、誰にも負けないくらい大人にも負けないくらいかっこよく頼もしくて。
“きっと私、駿がいれば大丈夫だ”
そう思ったのを今でも覚えてる。
それから私にとって駿は家族であり本当の兄のような存在でありヒーローなんだ。
「ねぇ、駿」
「ん?」
焼きそばを食べていた手を、ゆっくりと降ろし口を開く。
「駿はさ、恋ってしたこと、ある?」
「は?恋?」
もう高校生だ。恋なんてモテモテの駿はしたことがあるだろう。
ずっと一緒にいるのにそういう話私たちはしたことないしお互いに多分そういったことに興味すらなかった。