『どした?嫌か?』
『……先生、これ』
『そうだ、昨日の給食のやつだよ』
まさか、残り物を出されるなんて思わなかった。
『先生は、残り物をおいしいって思うぞ』
そう言って笑った。
とても楽しそうに。
『実はな、お母さんから電話があってな』
『!!』
『野中は、嫌だって思ったかもしれない。けど、この世界にはおいしいものを食べれない人がいるんだよ』
たとえそれが好ましくない食べ物だったとしても、と。
『食べられるってとても凄いことなんだよ。ちょっと失礼だけど、僕達は十分得してるんだ』
ちょっとじゃないな、と顔を少ししかめながら笑った。
──世界には食べれない人がいる。
その言葉を聞いて初めてお母さんが怒った理由が分かった気がした。
そう気づくと後悔が涙としてこぼれた。
残り物のコッペパンとコーヒーを前にして。
牛乳はコーヒーに入れてカフェオレにした。
とてもおいしかった。
『な、おいしいだろ?残り物』
先生は私が泣きながら食べる様子をニコニコしながら眺めていた。