萩原先生に朝の経緯を渋々伝えた。
泣きながら。
萩原先生は『そっかそっか』って、頭を撫でてくれた。
岡本先生が戻ってきたと同時に萩原先生は立ち上がってドアへ向かった。
最後に『ちゃんとお母さんに言うのよ』って柔らかく微笑んで行った。
戻ってきた岡本先生ははてなを浮かべていた。
棚の方へ向きを変えた先生は、またゴソゴソと何かを取り出して、作業し始めた。
それを黙って見つめる。
数分経つと、苦い香りが鼻についた。
でも嫌な匂いじゃなかった。
とても慣れた大人の香り。
『ごめん、野中。コーヒーって飲める?』
眉根を下げながらそう言って、コトっと白いテーブルに黒と白のプラスチック製のコップを置いた。
私は縦に首を振った。
『えっ、野中、コーヒー飲めるの?!』
そう言う先生に私は首を横に振って、また先生が驚いた。
縦に振ったのは、私の好奇心だと思う。
それと、大人が飲むものに憧れを抱いていたから。
いわゆる、チャレンジってやつ。
先生はこのままだと苦いから、って一緒に持ってきた牛乳を隣に置いた。
そして、もう一つ手前に置かれたものを見た。
戸惑った。
だって目の前に置かれた食べ物は昨日出てきた給食のものだったから。