「葵、なんか、ごめんな。


俺が葵を抱きしめたりしなければ、こんな状況になんなかったのに」


「私も、亮太くんに昔のこと何も言えてなかったし、チラシ持ってきてくれた時に朔と亮太くんが同級生だってわかったのに、今日まで何もできなかった」



葵が俺のことをどう思ってるのかわからないけど。


俺の中では、朱里と別れて葵と一緒にいたいって決まってた。


だけど、それは朱里も亮太も傷つけて手に入れる幸せだ。


そこまでして、葵とうまくやっていけるんだろうか。


でも、今日をのがしたら、葵とゆっくり話す機会はない気がした。



「葵、俺は彼女と別れて、葵とつきあいたい。


俺はずっと、葵のことを忘れられなかった。


再会して、やっぱり俺は葵が好きなんだってわかった」



葵は何も言わず、しばらくうつむいたままだったけど、小さい声で話し出した。


「朔、ごめんね。


亮太くんや朔の彼女を傷つけてまで、朔とつきあいたいとは思えない。


亮太くんが私を許してくれてもくれなくても、結果的に別れることになっても、私には朔を選ぶ資格はないから」


「好きになるのに、資格なんていらねーだろ。


俺は、ワガママだと思われても、自分の気持ちに正直に向き合いたいんだよ」


「・・・朔は、いつでも真っ直ぐだよね。


だけど、やっぱり、亮太くんときちんと話してからじゃないと、朔のことは考えられない。


朔も、彼女とちゃんと話して」


「じゃあ、結論が出たら必ず連絡しろよ」


「わかった、約束する」


戸締まりをする葵を待って、駅まで世間話しながら帰った。


一緒に歩くだけで、幸せを感じた。


少しだけ、昔のふたりに戻れたような気がした。