「サク、葵ちゃん、どういうこと?」


扉の音に振り向くと、亮太が立っていた。


あわてて離れたけど、俺が葵を抱きしめてるのは、完全に見られてしまった。


「亮太くんちがうの、私は・・・」


「亮太ごめん、もっと早く伝えるべきだったよな」


「ふたりして、俺のこと笑ってたのかよ!」


「ちがうの、私がちゃんと断らなかったからいけないの」


「亮太のこと笑ったりしてねーよ。


葵は、高校生の時につきあってて、大学生で再会した彼女だから」


「ってことは、葵ちゃんは元キャバ嬢か」


「亮太くん、嘘ついててごめんね」


「・・・もういいよ」


亮太は自分のデスクにある荷物を取ると、職員室から出ていこうとした。


俺は追いかけて、


「亮太待てよ、まだ話は終わってねーだろ」


亮太の肩をつかんだ。


「サク、年末に飲んだ時、葵ちゃんの写真見たよな?


なんでその時、言ってくれなかったんだよ。


これじゃあ、俺だけ知らないでバカみたいじゃんか」


俺の手を振り払うと、走って出ていった。



そこへ、慎一がひょっこり現れた。


「ちゃんと言えた?」


「なんで慎一がそんなこと言うんだよ」


「なんとなく、元カノがらみでトラブってんのかなー、と思ってさ。


朱里も気づいてたっぽいし」


「朱里が慎一に話したのかよ」


「サクが急に態度冷たくなったから、朱里は心配してんだよ。


年末に友達と飲んでからおかしいって感じてて、俺に相談してきてさ。


今日で言いたいこと全部吐き出して、朱里のことも考えてやれよ」


じゃあな、と慎一も帰って、俺は葵と二人っきりになった。


願ってもない状況なのに、うまく話せそうになかった。