「本当にすみません」


仕事終わり、バックヤードでパイプ椅子に並んで座り、三宅さんに社長との約束と次期店長を辞退したいことを伝えた。


結局、今日のお客様は五人だった。何人かお客様が入ってはきてくれたものの買わずに帰る人たちが多数。


このままでは、本当にジョルフェムは終わってしまうかもしれない。そんな窮地に立たされていることもやっと実感した。


「そっかぁ。でも、桜木には店長よりそっちのが向いてるかもね。次期店長のことは気にしなくていいわよ。それにしても、私も桜木と一緒にジョルフェムを変えたかったな」


怒ってる様子もなく、向いてるとまで言ってくれた三宅さんに安堵したと思った矢先、突然、三宅さんが涙まじりにポツリと言った。


私が慌てて「どうしたんですか?」と問いかけると三宅さんは時折、鼻をすすりながら自分の気持ちを正直に話し始めてくれた。


「私ね、ずっと桜木が羨ましかったの。入ってきた時から『ジョルフェムが大好き』って言えるあんたがね。私は、そんな強い思いを持ってジョルフェムに入ったわけじゃないし、店長になったのも二年以上働いてたからってだけだし」


「違います。三宅さんが店長になれたのは、ちゃんと実績があってそれを評価されたからです。でなきゃ本社近くの路面店で店長なんてなかなかできません!」