ふわっと抱きしめられ、耳元で聞く甘い声。ズルいな。雨と鞭を一人で使いこなすなんて。


社長は、私にとっては強敵、ラスボスだけれど、諒は私にたくさん愛をくれる人。


「・・・あの、一つ聞きたいんですけど、私たちってその、両思いじゃないですか?その、こ、恋人ってことですか?」


「当然だろう。なんだ?みぃは俺が好きでもない女に『好きだ』と言ったりキスをすると思っているのか?」


「ち、違います。そうじゃなくて、その付き合いましょうという言葉がなかったので」


すっかり涙は消えて、安心したら今度はまたそんな疑問が生まれてきた。どれだけ私は、疑心行脚なんだろう。


公私混同はなしだと言ってもあそこまで言って、私を評価してくれているし、たくさん愛の言葉を言ってくれている。


今だって抱きしめてくれているのにさすがに自分でもうざいと思えてきた。


「あ、あの・・・」


「桜木深月さん、俺と付き合ってほしい」


両肩を掴まれ、真剣な眼差しが私を見ている。でも、隠しきれていない真っ赤な耳。

ふっと視線をそらされ、「こんなこと、初めて言った」と照れた諒。


「・・・嬉しい。よろしくお願いします」


二人で顔を見合わせて笑った。社長に拾ってもらえて本当に良かった。諒を好きになって本当に良かった。