「変なの。思ったこと言っちゃえばいーのにさ」
頭の後ろで手を組んで、アズロが言った。
あたしはムッとしてアズロを見る。
「あのね、そんな簡単なもんじゃないのよ」
「へー?それじゃさ、君はずっと言わないつもりなの?」
「…今は、言わない。ってゆーか、言えない。あたしの中で何かが吹っ切れたら、言う」
半ば自分に言い聞かせるように言うと、アズロは「でもさ、」と続けた。
「…いつまでも時間があるとは、限らないよ」
あたしはこの時、アズロの言葉を笑って受け流した。
†††
情けない。
部屋へ戻るまで俺は、そんなことを考えていた。
気になっている事を、いつまでも引きずって、挙げ句、姫様に心配されてしまった。
俺は姫様に、あんな顔をして欲しいわけじゃないのに。
早足で廊下を歩いていると、知っている声に呼び止められた。
「………おいっ」
「…ウィン?」
立ち止まると、ウィンが駆けて来て、辺りをキョロキョロと見回す。
「…どうしたんですか?」
「ちょっと、いいか?」
そう言って、ウィンは一枚の紙切れを俺に渡した。