「瀬名さんはずっと、僕が伝説の営業マンみたいになりたいから頑張ってるんだと思ってましたよね」
「うん。……違うの?」
「そうですね、違います」
「えっ!?」
思わず身を乗り出すと、テーブルの上のミルクティーがカタカタ音を立てた。
「僕はずっと、たった一人に認められたかったんです。すごいと思われたかった。僕が頑張る姿を、その人に見ていて欲しかった。……瀬名さん、」
「は、はい」
「僕はあなたのことが好きなんです」
創くんが真剣な顔で、言った。
一瞬、頭が真っ白になった。
何もかもが頭から消え去って、自分の心臓の音だけがやけに大きく鳴っているように感じた。
「だから僕はずっと、上を目指してきたんです」
言われたことが咄嗟には処理出来なくて、理解するまでに少し時間がかかってしまった。
創くんが、私を好き?
そう言われたのだろうか?
「瀬名さんに良いところを見せたくて、認められたくて。……僕はずっと、瀬名さんのために頑張ってきたんです」
「創くん……」
少し頬を赤く染めて、全力で私と向き合っている姿に胸がぎゅっとなった。
可愛いと思っていた男の子が、今は勇気ある男の人で、ありったけの好意を向けてくれている。
素直に嬉しい。
全然気付かなかったし、驚いたけど。
私はいつも創くんのために何か出来ればと思って働いていたし、私なりに創くんと向き合ってきたつもりだ。
創くんも、私のことを思って働いてくれていた。
ただ、私とは”思い方”が違っていたみたいだ。