この時、先輩は優くんを、そしてあたしを苦しめようと決めたのだった…。
目の前で、先輩と優くんが言い合いとなっている。
あたしはそれを聞く力さえなかった。
周りの雑音、二人の声、そんなもの気にならなかった。
ただ頭の中にぽつんと浮かぶものは『相沢さん』。
彼女の存在だけだった。
「だって連絡取ってるんだろ?図星?」
「今は関係ねぇし。百合、行こ」
「うっうん…」
初めて優くんに触れられたのがこの時だった。
覚えてますか?
あなたの温もりを感じたあたしは、あなたを離したくないと強く思ったの。
優くんは温かい。
「百合ー。まだ終わってねぇから」
遠くから先輩の声が聞こえてくる。
あたしはそれに反応はしずに、ただ優くんの温もりだけを感じていた。
泣きそうな体を抱いて。