「わざわざありがとう。」
あたしはボールを彼に渡した。
「ううん。大丈夫!
練習頑張ってくださいね」
最後に笑顔を見せて、彼の前から去っていく。
もしあの人が一年生なら初めて見る顔だなぁ…と心の中で思いながら、歩いていく。
校門を通り、あたしは立ち止まった。
また…ですか。
「先輩…」
もういい加減にして…。あたしをこれ以上苦しめないでよ…。
「百合、今日はいい?」
それはどういう意味?
今日は一緒に寝てくれるってこと?
あたしは先輩の奴隷なんかじゃない。
逃げた方がいいと思った。
逃げられると思った。
だからあたしはカバンを抱えて走り出したのだ。
やはり当然先輩は追いかけてくる。
「百合!!待てって!!」
後ろから聞こえてくる先輩の声。
嫌だ、嫌だ。
誰か助けて…
助けて、優くん…