ずっと聞いていたい…。あなたがあたしの名前を呼ぶ声を。
着信音より心地が良い。
電話を切りたくなくなる。
それはどういう現象?
きっとあなただからよね。
電話を持つ手が強くなる。
小さな優くんの声。
斉藤くんが自分を責めた、あの声にどこか似ていた。
「…どうしよっかな~」
少しだけ意地悪を言ってみるあたし。
今、この瞬間だけ優くんはあたしのモノ。
そう思うと嬉しくて電話を切りたくなかった。
『そんな怒ってんの…?』
怒るわけないよ。
だって優くんはあたしのことを気にしてくれたってことでしょう?
怒るわけないじゃない。
「怒ってないよ。こうして電話くれたしさ」
それだけで十分。
今夜はきっと満月かな。
窓から空を見上げると、黄色い輝きが見えたから。