なぜ邪魔ばかりするの?
『さよなら』と告げたはずなのに、どうしてよ。あれは夢だったの?



「…なん…で…」



一歩後退りをする。
夕陽があたしの目をおかしくさせる。
先輩の顔がはっきり見えない。
今笑っているの?
それとも怒っているの?
きっと、無表情なのだろう。
いつもより低い声がそう語っているから。



「俺さ、納得いかなくて。自分の気持ちを伝えてるだけなのに何で拒否られるのかが分からねぇ。」



あたしと先輩の距離はわずか1メートル。

殴ることもできる。
蹴ることもできる。

覚悟を決めなくちゃいけない気がした。


あたしがここで好きな人の名前を言ったら、先輩はきっと優くんに悪戯するだろう。

そんなの嫌だ。


優くんが痛い目にあうくらいなら、あたしが代わりに痛い目にあってやる。


もうそれくらいの覚悟はあった。



「…言えません。
言ったら先輩、嫌がらせをするでしょ?」