涙を見られたくなかった。
きっと泣き顔はひどいから。
化粧が取れているはずだから。
これらも理由だけれど、一番の理由は、優くんに心配されると余計辛かったから。
「優…まぁいろいろ」
「何かあったのか?」
「今は言えないみたいなの」
沙紀があたしの心を読み取ってくれたのか、優くんにこう言ってくれた。
聞かないで欲しい。
また嫉妬で狂いそうになるから。
そして、そのまま授業が始まった。
涙を無理矢理止めて、沙紀が貸してくれたハンドタオルで涙を拭いていく。
あなたがあたしのことを名前で呼んだ日のことを覚えている。
素直に喜びたかったけれど、素直になれないあたしがいたの。
本当は、とっても嬉しかったよ。
「百合…どうかしたの?」
突然で驚いた。
優くんが『百合』と呼んだ。
息が苦しいよ。
あたしは優くんを見て、首を横に振る。
あなたに気持ちを伝えたい、今にでも。