耳を塞いで、目を閉じる。
神様が悪戯しているに決まってる。
近づいてくる声。
「百合…やっと見つけた…」
その次の瞬間、誰かがあたしの肩を触れた。
びくりと反応する体。
あたしはおそるおそる顔を上げる。
夢かと思った…。
「…え…」
そこには笑顔の男の人が立っていた。
白髪まじりの髪の毛。
刻まれた皺。
優しい瞳。
「やっと…逢えた…」
涙腺がゆるみ涙が溢れる。
まさか…そんな…。
あなたなの…?
「…ゆ…うくん…?」
「随分待たせたね…ずっと…逢いたかった…。手紙届いたよ…。百合が『愛してる』って叫んでいたの…気づいていたよ…」
容姿は変わってしまったけれど、あの笑顔は何も変わっていない。
あたしも…
逢いたかった…
薬指に光るペアリングが恋人の証を示している。
優くんも瞳に涙をたくさん溜めていた。
ずっと、ずっと…
逢いたかった…。
「優…くん…」
「行こうか…百合…」
そう言って、優くんは皺だらけの手を差しのべる。
この手にずっと触れたかったの…。
迷うことなく、あたしは優くんの手を握る。
触れあった瞬間、真っ白だった世界は色付き始めた…。
「これからはずっと一緒だよ…百合…」
笑顔であたしを見つめてくれる優くん。
あたしも優くんを見つめて、笑顔になるの。
「優くん…ずっと言いたかった言葉があるの…」
「なに?」
やっと言える日が来た。
これから二人で真っ白な世界に少しずつ色を付けていこうね。
「…愛してる」
《END》