寂しいよ、離れたくないよ。
なんて言えるわけがない。
困らせてはいけないよね。
「じゃあね、百合」
「うん、また明日ね」
あたしは優くんに手を振って、電車に乗り込む。閉まるドアを確認すると、愛しさが増した。
このドアを壊して、優くんに飛び込みたい。
優くん、優くん…。
離れていくあたしたち。
優くんが見えなくなった途端、あたしから笑顔は消えて涙と変わった。
この時、優くんもあたしと同じだった…。
あたしはもうすぐこの街から居なくなる。
明日で学校が最後の日。そして明後日、カナダへ旅立つ。
別れがもうすぐそこまで来ている。
寂しさが日々積もっていく。
毎晩泣いて、泣いて、泣いて。
優くんの温もりを記憶の引き出しから取り出して、ようやく眠れるのだ。
優くんの温もりは、どんな高級の羽毛布団よりも、どんな柔らかい絨毯よりも、心地が良い。