愛しいあの人の名前。
見た途端胸が締め付けられる。
「はい…」
「百合…?」
電話の向こう側の彼の声は弱々しかった。
「優…くん…?」
一人で泣いていたの?
やっぱりあたしと別れる?
答えを聞くのが怖い。
「ごめんね…百合…俺、頭回らなくて」
「ううん…あたしこそ黙っててごめんね…あたし、優くんと離れたくないよ…ずっと一緒にいたいよ…」
零れ落ちる素直な言葉。だから離れる、別れるなんて言わないで。
「俺もだよ…だから俺、百合を応援するから!百合が安心して留学できるように」
優くんはあたしの知らないうちに大人になっていたね。
子供のままなのはあたしだけなのかな。
あたしを幸せにしようとしてくれた。
背中を…押してくれた…。
嘘だと思った。
別れを告げられる、そればかり考えていたから。