瞳と別れ、あたしはトイレに向かった。
これから優くんに会えると思うと、化粧が崩れていないか心配だったから。

こんなことをしても意味ないのにね。
自分は本当にバカだよ。


薄暗いトイレに電気を点けて、鏡の前に立つ。
化粧を少しだけ直して、笑顔の練習をする。




優くんに見て欲しいから、メイクを練習する。
優くんに可愛いねって言って欲しいから笑顔の練習をする。


単純って言って笑う?
単純な理由だから自分が変われるのよ。



その時、誰かがトイレに入ってきた。
あたしは練習をやめて、横を見る。
そこには、広瀬さんが驚いた表情をして立っていた。



「…あっ…」



広瀬さんが言葉を漏らす。
持っていた携帯をしまい、小さく会釈をした。


あたしを知っているの?



やはり広瀬さんは近くで見ても綺麗だった。



「どうぞ!あたしもう行くので…」