秋が終わり、冬が来る。今年は雪が降るのが早かった。
雪雲から地上のことを知らない雪たちが落ちてくる。
もうすぐ息絶えることなど知らずに。
地面に触れれば消えてしまう。
降っている雪たちは嫌だとは思わないのだろうか。

あたしなら嫌。
自分から息絶えるのは御免よ。



雪を見ると切なさを与える。
去年のことが思い出されるから。

あの香水の匂いをまだ覚えている。
優くんの誕生日からあの香水を見ることはなくなった。
クローゼットの中の奥深くに眠っているから。
二度と開けられぬ香水。
まるで自分の気持ちのよう。

二度と伝えられることのできない気持ち。



何やってるんだろうと嘆くけれど実際は何もできやしない。


窮屈なベッドの中で泣く日々の繰り返し。




そんな毎日を過ごしていた。




気がつけば雪は溶けて、街は春を恋しく思い始めた季節となった…。