この時だった。
あなたの中にはもうあたしなどいないと気づいたのは。
あなたを想って気合いを入れてきた化粧も、髪型も、見てはくれなかったね。
期待したあたしが馬鹿でした。
「あ、百合ー!おはよー!!」
遠くから聞こえてくる瞳の声。
あたしは声の聞こえる方向へと顔を向ける。
そこにはいつもと雰囲気の違う瞳がいた。
「瞳、おはよう!なんか今日雰囲気違うね?髪型が違う?」
「そうそう!ちょっと髪の毛アレンジしてみたの。百合、今日可愛いね!」
瞳にそう言われて少しどきっとする。
やっぱり分かった?
優くんも分かってくれるかな?
あたしたちは集合場所まで向かっていく。
キャリーバックを一旦置いて、瞳は観光雑誌に夢中になる。
「これ欲しいなー。でもこれもいいかも」
隣で独り言を言っていた。
「あたしトイレ行ってくるね」
瞳にこう言って、あたしはトイレへと足を運んだ。