「…やっぱりまだ優を忘れられない?」
「うん…。まだ優くんを忘れられない…。見て?」
あたしはそう言ったあと、ポケットから優くんにもらったリングを取り出した。
あたしのお気に入りの場所。
唯一、優くんを感じられる場所。
「これって…」
「優くんにもらった指輪なの。ずっと持ってるの…。いつかまたはめれる日が来るって信じてるから…」
きらりと光るリング。
存在を表しているよう。それを見た安里くんは、溜め息を漏らしたあと、あたしの頭に軽く手を置いた。
「もし小林が優を忘れてたら、迎えに行こうって思ってたのに、迎えに行けないじゃん。それ見たら諦めるしかないよな」
そう言って、変わらない笑顔を見せてくれた。
どこまで心の広い人なの…。
また涙腺がゆるむ。
「…安里くん?」
「俺は頑張れしか言えない。頑張るのは小林だからな?応援してる」
ぽんぽん、と軽く触れて、『またね』と言って去って行った安里くん。
あたしは彼の背中に向かってこう呟くのだ。
「…好きになってくれてありがとう…」