あたしが初めてあの人を見たのはあの時だった。


教室に向かう途中、廊下を歩いていたら、前から誰かが走ってきたのだ。

手で顔を隠して、こちらに向かって勢いよく走ってくる。


短いスカートから伸びる細い足。
そして長い髪の毛を揺らし、他の人とは違う空気を漂わせていた。



あたしの視線は彼女に釘付けとなる。



だからぶつかってしまったのかもしれない。



動けなくなったあたしの体は、廊下の真ん中に止まったまま。


あたしの存在に彼女が気づいたののは数メートル手前。
だから避けきれなかったのだ。


ぶつかる、肩と肩。



「…ご、めんなさい…!!」



「え…はい。こちらこそ…」



何かに追われているよう。
ぶつかった反動で顔から手が離れた時、彼女の顔を見た。


心臓が止まってしまうくらい…美しかった…。




そして彼女は手首を抑え、消えていった…。