ポケットからリングが取り出せないように。
想い出の中の優くんをあたしは追っている。
「…なんか、突然すぎて…。土屋くんは分かってくれた?」
「あたしの背中を押してくれた…」
頼もしい言葉と誕生日プレゼントをくれた。
あのクマの人形は、ベッドの隣に置いてある。
安里くんを忘れないように。
すると瞳は観光雑踏を置いて、あたしの頬を強く握った。
「百合!何がなんでも幸せになんなきゃね!!そんないい男を振ったんだから、意地でも幸せになんなきゃ私怒るよ?」
「い…たい…」
そう言うと瞳はいつもと変わらない笑顔であたしを包み込んだ。
不安が溶けた瞬間。
何も怖がることなんてなかった。
ありがとう、瞳。
あたしは必ず幸せになります。
必ず、必ず…。