このまま後ろから抱きしめたかった。
人があまりいない場所に行き、段差の上に座る。
そして優くんはあたしの隣に座った。
久しぶりな感じがする。
隣に並ぶのはきっと、別れ話をした屋上のとき以来だろう。
「何でケンカしたの?」
唐突ね。
そんな気になる?
「あたしが悪いの」
一言呟き、涙を祓う。
「……安里、心配してると思うよ」
「…そうね」
優くんの顔を見たい。
瞳を見て話がしたい。
そしたら自分の気持ちに誤魔化しは効かないと思ったから。
でも距離は近いけれど、心は遠い気がした。
まるで同じ形をした、太陽と月のよう。
「……久しぶりだね」
すると優くんがこう言った。
まさか、そんな言葉を聞けるなんて。
だって、優くんはあたしのことを忘れてしまったと思っていたから。
花火が強く咲いた。