伝わる、涙の温もり。
ぽたぽたと速度を上げて流れていく。
頭の中はもう優くんのことでいっぱいだった。
あたしのことはもう忘れてしまったの?
あたしとのプリクラは剥がしてしまった?
あたしとの想い出はもう消してしまったの?
あたしはまだ憶えているよ。
手の大きさ、唇の感触、低い声、体の温もり、あなたの余韻。
どうして、あたしたちは別れてしまったのかな…。
あたしは突然歩くのをやめる。
下を向いて、涙をただ流すのだ。
「ゆ…り??」
やはり安里くんは異変に気づいてしまったよう。無理もない。
涙が露店の光で反射をしているはずだから。
「ご…めんなさい…」
一人になりたかった。
この余韻を消したくなくて、静かな場所を求めた。
だから安里くんの手を離し、その場から走っていく。
お願い、一人にして。
やっぱりあたしにはあなたしかいないみたい。
あなたを忘れなきゃと思っても、忘れられない。それはきっとあなたが優しいから。
反則よ、粉々になったあたしに温もりを与えるなんて。
突然、引っ張られた手。この時は期待などしていなかった。
でもこの温もりを憶えている。
体が憶えている。
「…百合?」
あなたをもう一度手に入れたいの。
夜空に虹色の花火が打ち上がった。