お母さんは和室にある時計を指差してこう言った。
あたしはその時計を見て慌て出す。
安里くんと待ち合わせの時間まであと数分しかない。
夕方の6時に駅で待ち合わせ。
浴衣では走れないし、完璧遅刻。
「やばーい!!行ってきまーす」
リビングに置いてあった荷物を手に取り、家を飛び出す。
下駄のカラン、コロン、という音が夏らしさを与えた。
携帯を取り出し、安里くんに連絡をする。
最近変えた携帯は慣れない。
安里くんにプリクラを剥がして欲しいと言われ、あたしはどうしても剥がしたくなかった。
だから新しい携帯を買ったのだ。
また、自分の優柔不断さが芽生える。
「あ、安里くん!?ちょっと遅れそう!ごめんね?」
『大丈夫だよ。ゆっくり来いよ?危ないから』
「ありがとう!じゃあまたあとでね!!」
優くん…
24時間の中で、一瞬だけでもいいから、去年のことを思い出してください…。