「でも…諦めた方がいいよね?優くんに迷惑だし…」
冷たくなった手を擦りながら、温かさを求める。でも一向に温かくならない。
すると沙紀があたしの手をぎゅっと握ってきた。あたしは驚く。
沙紀の手が温かかったから。
「諦めちゃダメだって!諦めたらそこで終わりなんだよ?もしここで諦めて、結局あとで後悔するでしょ?だったら諦めるなんて言っちゃだめ!」
沙紀の真剣な眼差しが母親を思い出させた。
強い彼女の思いが、すんなりと伝わってくる。
分かってる…
分かってるよ。
「でも…優くんは…」
あたしを好きじゃない。
もうあたしなんか心の中にいない。
知ってしまったの。
優くんはあたしを鬱陶しい存在だと思っていると。
だからあんな表情をあたしに見せたのよ。
人間はなぜこんなにも、温かいのだろう。
軽く触れた肌に、温もりを感じる。
ずっと、触れていたいと願うのに、儚く消えてしまうなんて…
そんなの残酷すぎる…。