チャンス。
チャンスがあるから前に進むことができる。
クリスマスがチャンスならば、あたしは進むことが出来るだろうか。
そんな質問を曇った空に投げ掛ける。
返答はないけれど、決心が着いた。
「クリスマス…。優くんは何するのかな…」
ちらりと後ろを振り返る。
廊下で斉藤くんと仲良く話す彼の姿が映った。
やっぱりかっこいい。
笑う顔も、崩れた制服も、大きくて細い手も、全部愛しい。
あなたはもう人のモノかもしれない。
チャンスをあたしにください。
それが負けだったら、あたしはあなたを諦めるから。
…授業が終わり、部室へと向かう。
ジャージに着替え終えて、グラウンドに向かう途中、後ろから誰かに話しかけられた。
この声は誰の声?
聞いたこともない声だ。
「小林さん?」
後ろを振り返ると、そこにはあの人が立っていた。