「俺は…ただお前を…」



「愛は簡単に手に入るものじゃありません…苦しくなったり、辛くなったりするから手に入れたいものなんです…。今の幸せをやっと手に入れたの。だから壊さないで…」




急速になる涙。
ぽろぽろと零れ落ちた涙はシーツに染みていく。水玉模様に変化をする。


先輩は立ちすくみ、言葉を漏らさない。
何かを考えているよう。



「…俺は小さい頃から欲しいものは簡単に手に入ってきた。だから…簡単に手に入らないなんて、そんなのムカつく」




「それは…」




それはただの我が儘だよ。
それでは本当の幸せを手に入れることなどできない。
努力をして勝ち取るからこそ幸せが溢れるのだ。

先輩はまだまだ子供のようだね。


けどいつかきっと気づく日がくるだろう。



「諦めねぇから。お前を絶対取り戻すから」




真剣な眼差し。
先輩は最後にこう言って部屋から出て行った。