その後、ラルカンと別れてからいったん部屋に戻った。

「リノ様、もしやと思いますがレセル様に会われるのですか?」

先程の会話から推察したのかアリアスが、聞いてきた。

「お義兄様に結婚のご挨拶に伺うのは常識でしょう?」

「今日の日記にリノ様が常識という言葉を知っていたと書かなくてはいけませんね。」

悪態つくアリアスを無視して私は続けた。

「じゃあアリアス、情報収集よろしくね。」

「………。それは構いませんが、リノ様。ラルカン様と二人きりで会われるのはおやめくださいね。」

やめろも何も貴族社会では、結婚した女が夫以外の男性と二人きりで会うことを良しとしない風習がある。

これでも王太子妃ですから、そのへんはきちんとしますよ、私だって。

でも、アリアスが言っているのはそういう事じゃないのだと思う。

彼女も気がついていたのだ、ラルカンの違和感に。

「やっぱりあなたも何か感じた?」

差し出されたアフタヌーンティーを飲みながら聞いた。

「はい。何かよくわかりませんが、危険を感じました。」

「あなたがそう感じたなら危険なのね。アリアス、彼から目を離さないでいてね。」

「かしこまりました」

私はラルカンを監視することにした。