「アリアス、これおかしくないかしら?」
豪華絢爛の部屋で私は、身支度を整え侍女のアリアスに尋ねた。

「ええ、とてもよくお似合いですよ、リノ様」

窓の外はすでに夜を迎えており、昼間の騒々しさも嘘のように静まりかえっている。
今夜は私と、バルザック帝国王太子、ジウォンとの初夜だ。

正直彼の事に興味などないけど親の決めた結婚に逆らう気もない。

幼い頃からそうなるものだと思い生きてきたからか、別に安堵も落胆もない。

あるのはただ、あぁ こんなものかと言う嫌に現実じみた感想だけだ。

‘‘コンコン’’

扉をノックする音が聞こえた。

「はい」

アリアスが、返事をすると「ジウォンだ」と、返事があった。

「どうぞ、お入りになってください」

私が静かに答える。 ここであわてふためいてはいけない。けして表情は崩さず、あくまで余裕を見せなければならない。