できない。
そんなの出来るわけない。


「出来ません…」

誠也さんを直視できなかった。
その目は髪とは対照的に漆黒の色をしていた。

「甘えんな」

甘えんな────────。


それは何故か私の心に響いた。

甘えてるつもりは無い。
むしろ甘えたことなんてないと思ってた。


怖い。
自分を撃つ。

そんなの生きてきて経験する事はないと思ってた。


それが今。
この男の前で。

自分の為に自分を撃つ。
単純に考えて何故撃つのか私にはわからない。


この男の考えてることは私には分からない。


パンッ────。


「…」


「私を助けてください…」



そう言った私の手からは真紅の血が流れていた。

自分のためにはこうするしかない。
自分の命のため。


「何今の音!」

そう言って勢いよく瀬戸大凱が部屋に入ってきた。

私はそれに目もくれず誠也さんの漆黒の目を見ていた。


誠也さんも私から目を離す事はなかった。


それを感じ取ったのか瀬戸大凱は部屋から出ていった。



「大凱」

低い声が瀬戸大凱を引き止めた。

「こいつの腕どうにかしてやれ」



そう言った時、誠也さんは私から目を離した。

張り詰めた糸が切れたように私はその場に倒れ込んでしまった。

今になって刺された横腹が痛むのは何故。



誠也さんに対する恐怖心。
体を動かなくするように鋭い瞳。

全てが私の中で何かを動かした。