────コンコンッ
このドアの先に誠也さんがいる。
「入れ」
聞こえたのは低く、でも甘い声だった。
「…失礼します」
ドアの先にいたのは、黒くて長いソフォーに座った赤髪の男だった。
呆気にとられていた。
「なんのようだ」
その言葉に私はハッとした。
私はこの男にお礼をしにきたんだ。
「あの…」
どうしても上手く言葉が出てこない。
この男からは独特はオーラを放っていた。
────────近寄るな。
そうとでも言ってるような。
「助けていただきありがとうございました」
下を向きながらそう私は呟いた。
怖くて誠也さんを直視できない。
何故だろう。
この人には絶対に近寄っては行けない気がした。
「それだけか」
「え」
まぁ、そうだけど。
そんなに冷たく突き放さなくても。
「────でてけ」
ドスの聞いた声でそう言った。
私は動くことができなかった。
「自分の家にでも帰れ」
自分の家。
あんな場所死んでも帰りたくない。
狂った母親と2人。
いつか殺される。
「ここに住む事は出来ませんか?」
一か八か。
きっと追い返されるだろう。
でも、今の私にはこれしかない。
ホテルに何日も泊まるお金はない。
かと言って、あんな母親と2人なんて嫌だ。
「…」
誠也さんは何も言わない。
それが逆に不気味で気持ち悪い。
カチャッ
誠也さんの手にはテレビでしか見たことないようなL字型の拳銃が握られていた。
それをこちらに投げて────────。
「それで自分を撃て」
そう言った。
この男やっぱりおかしい。
死さえも恐れないんだ。