窓から外を見ると雨が降ってた。
「あ」
私は少しでだけど何かを思い出した。
赤髪だ。
昨日、助けてくれたのは確か赤髪。
確信は無いけど、うっすらと覚えている。
「瀬戸大凱!」
「あ?」
廊下にいた瀬戸大凱に声を掛けた。
赤髪にお礼を言いたかった。
「この建物の中に赤髪はいる?」
「いるよ、腐るほどな」
え、そんなに、いるの。
この建物なに。
「お前を助けたのは誠也だ」
誠也。
名前からしてイケメンだよ。
「その誠也さんに会いたいです。ちゃんとお礼を言いたいんです。」
そう言うと瀬戸大凱の顔が歪んだ。
「誠也に会うのか?」
「はい」
何がダメなんだろうか。
名前からは想像出来ないほどブスとか?
「私はお礼を言いたいんです」
瀬戸大凱は下を向いていた。
そんなに会うのをはぐらかさせる人。
只者ではない。
「いいか。誠也は危険だ────」
危険?
私を助けてくれた優しい人が?
「お前、夜華ってしってるか?」
夜華(よばな)
ここら辺では有名だ。
悪い意味で────。
ヤクザよりも質が悪いって聞いたことがある。
何をしてるのかは全く知らないけど、唯一知ってるのは。
夜華に近づいたら命はない────────。
私はそんなに危険なところへ来てしまった。
でも、私を助けてくれた人たちがそんなに怖い人には思えない。
「夜華には掟がある」
「掟」
「それはただ一つ。
誠也を怒らせるな────────。
あいつを怒らせたらお前の命はない」
これだ。
この絶対的力を持っている誠也がいるからみんなは近寄らない。
そいつに殺させるかもしれないから。
「私、なんて呼んだらいいですかね、その人のこと」
誠也はさすがに失礼すぎる。
でも、下手に変な呼び方をしたら殺させるかもしれない。
冷静を保っているつもりだけど、実はすごい怖い。
「誠也さんとでも呼んどけ」
誠也さん。
うん、それが一番いい。
「ちなみにお前を助けたのは誠也の命令だ」
誠也さんの命令。
やっぱり私にはそんな誠也さんがなぜそんなに恐れられているのか分からない。
人を助ける程のいい人なのに。
「誠也の所に行くならその階段を上がって右だ。」
螺旋階段があった。
これを上がって右に誠也さんがいる。
「もう一つ、誠也がいる4階5階は用が無い限り近寄るな」
誠也さんがどれだけ恐れられているのか。
私はこの後体感するんだ────────。