「ん…」
頭を鈍器で叩かれたような痛みに襲われながら私は目を覚ました。
記憶が全然ない。
ここどこよ。
ベッドで寝ている事は分かっているがこの部屋の構造からして私の部屋ではない。
第一、あんな家帰りたくもない。
親切な誰が運んでくれたんだ。
ありがとうございます。
そう、誰だかもわからない人に心の中でお礼を言っておいた。
「おぉ、起きたか」
ドアの方から聞こえたのは男の声。
昨日の男だろうか。
そっと目を向けると金髪の髪をなびかせた男が立っていた。
「誰」
咄嗟にそう口から出た。
「命の恩人」
男はそう答えた。
いや、そうじゃなくて名前。
「しっかし、お前はあんなとこで何してんだよ
」
「私の質問に答えてよ。あなたは誰?」
私はそれが気になっていった。
得体のしれない男の部屋に居て、平常心を保てるほどタフじゃない。
「瀬戸大凱(せとたいが)」
ますます誰。
「じゃあ、俺の質問に答えろ。お前は昨日あそこで何してたんだ」
「言わなきゃダメですか」
人にはあまり言いたくないことだってある。
「身の安全を考えるならな」
そう言って瀬戸大凱は私を脅す。
話さなかったらどーなるんだろう。
殺される?
さすがにそこまではしない?
「早く答えろ」
「やです」
そんなにしつこく聞くなんて人の気持ちを考えて欲しい。
デリカシーが全くない。
「てめぇ、殺されたいのかよ」
その目はとても怖かった。
目で殺されるのかと思うくらい。
「私は怪我人です。怪我が治ってからにしてください」
私は何とかこの質問から逃げる方法を考え、これが最終的にたどり着いた答えだ。
瀬戸大凱も確かに…と言ってそれ以上は聞かなくなった。
「おい、多村琴(たむらこと)」
「え」
なんで私の名前を。
自己紹介した覚えはない。
「おとなしく寝てろ。」
瀬戸大凱は、それだけを言い残し部屋から出ていった。
瀬戸大凱が、いなくなった部屋は、テレビと冷蔵庫、ソファー、お風呂が付いてる立派な部屋だった。
でも、とても殺風景。
私はどうしてここにいるの。