あの日以来、コンビニに行く時
誠也さんがいれば送ってもらい、いない時は1人で行くというのが当たり前になってきた。


今日は誠也さんが見当たらない。
きっと忙しいんだ。

こんな大きな組織を束ねる人、
暇なはずない。



1人でコンビニ行こう。


螺旋階段を1人で降りていく。


「…………や……しょ……」



微かに聞こえた声。
それは女の甘ったるい声だった。

その瞬間大体予想はついた。




────誠也さんの彼女だ。

誠也さんが彼女を、連れてくるのは珍しいことではない。



でも、彼女が来てるってことは私はコンビニには行けないということ。

半分諦めていたが一応螺旋階段の1番下まで降りた。




そこにいたのはやはり誠也さんと彼女だった。

今日の彼女はとても綺麗で。
でも、なにか様子がおかしい。



誠也が彼女に背中を魅せてる。
いや、違うかもしれない。

彼女が魅せてとお願いしてるのかも。



「…誠也、ここいい?」


そんな甘ったるい声が私の耳に届いた。



誠也さんはコクリと頷いた。
そうすると彼女は机の上にあったカッターを手に取った。


ゆっくりと背中を滑らせていくように動かした。


誠也さんの低い唸り声が響いた。
その背中からは静かに血が滴り落ちた。


信じられない。
頭おかしい。

こんなの普通じゃない。



しかし、私にはそれを止める勇気などなく
ただ吐き気に耐えながら見ていることしか出来なかった。