「ありがとうございます」

コンビニの前でそうお礼を言っても何の反応もかえってこない。


ヘルメットをしていて、ちゃんと
顔が見えないから余計何を思ってるのかわからない。

「……なんか食べますか?」



沈黙に耐えられなかった。
しかし、そう問いただしても返事はない。

唐揚げとか買ってけばいいかな。



誠也さん、唐揚げなんて食べるのかな?
何を食べてるか何をしてるのか。

誠也さんのこと何も知らない。



「────おでん」

「え」



誠也さんがおでん。
庶民的なものを食べる誠也さんのギャップに
少し笑ってしまった。



「具は何がいいですか?」

しらたきとか好きそう……。
強そうな誠也さんがしらたき。

もう私は誠也さんのことをバカにしかしてない。



「それはお前に任せる」

私のセンスで買ったら誠也さんに変なもの買ってしまう。


「あ、一緒に行きますか?」

それが1番手っ取り早い。
誠也さんの好きなものを誠也さんが選ぶ。

そうしよう!


「ほら、行きますよ!」

そう言って私は誠也さんの手を引いた。
その手はヒヤッとしていて、きっと寒かったんだろうなと思う。

それとも冷え性。


コンビニの中は暖かかった。

「いつまで握ってるんだよ?」



ハッと思い咄嗟に誠也さんの手を離した。
少し名残惜しいように。


手を離すと誠也さんはおでんの前へ向かった。


おでんを選ぶ誠也さんが可愛らしく見えた。
私の誠也さんへ対する感情は未だに分からないまま。




────結局、誠也の選んだおでんは昆布とこんにゃく。