月日は流れ、あっという間に秋。
誠也さんと私の間になにか進展があるわけでもなく、むしろ何もなかった。
私にとって誠也さんは手が届かない存在。
雲の上の人なんだと実感した。
なんせ誠也さんは巨大な夜華を束ねる人。
私が安易に近寄っていい人じゃなかった。
分かっていたはずなのに、今でも誠也さんが話しかけてくれないか、と思っている自分がいた。
何もすることがない私は毎日暇を持て余していた。
「よし」
コンビニに行こう。
甘いものが食べたい。
外の空気が吸いたい。
私は螺旋階段を1番下まで下りた。
そこには、規則正しく並べられたバイクと数台の車。
どれも傷などついていない綺麗な物だった。
それを横切り、外へ出ようとする。
「どこへ行く」
まただ。
その声を聞いた瞬間、私の胸はドキッとなった。
何とも言えないこの感じ。
誠也さんの声。
「コンビニへ行ってきます」
振り返るとそこには赤髪が立っていた。
それを見た私は胸が締め付けられた。
雲の上の存在の人が私に話しかけてくるのは何日ぶりだろう。
私の返事になんの返事もしない誠也さん。
そうすると一台のバイクに近寄った。
「送る」
「え」
いきなりの事で頭がついていかない。
私のことなどお構いなしの誠也さんはバイクに颯爽と乗りヘルメットをつけた。
「ちょ、ちょっと待ってください」
そう言うと眉間にシワを寄せながらこう言った。
「文句言ってんじゃねぇ」
その真っ黒のオーラに逆らえることなどできなく、仕方なく誠也さんの後ろに乗った。
「行くぞ」
そう言うと、ブンブンッとバイクが大きな音を出す。
「掴まってろ」
そう言われてもどこに捕まっていいのかわからない。
腰でいいかな。
私は誠也さんの腰に腕を回した。
とても細い腰だった。
ちゃんと食べてるのかと思うくらい。
捕まったと同時にバイクが動き出した。
凄い爆音を響かせながら────。