「なにしてんだよ」
私はその言葉に何も返す事は出来なかった。
そして、目も合わせることが出来なかった。
「あの…すいませんでした…」
何故謝ったのか自分でも分からないけど、とりあえず謝っとく。
それがわたしの咄嗟にでた答えだった。
「……」
何も返事されないと逆に怖いんだけど。
そんな私の考えなんて知らない男はいつまで経っても返事すらしてくれなかった。
私だってそんなにタフじゃない。
この沈黙に耐えられなくなってきた。
何か言うべきか。
それとも逆に言ってはダメなのか。
思考してみるが答えが分からない。
なんせ、この男のことをそんなに、詳しく知らないから。
もっと知りたい。
もっと近くにいたい。
あなたに対するもっとは私の中でどんどん大きくなっていった。
「帰るぞ──────────」
え。
え。
え。
「グダグダしてんじゃねーよ」
はっと我に返った。
帰るぞ。
そんな単純な一言だけど嬉しかった。
その気持ちよりも何故誠也さんがそんなこと言ってるのかが不思議だった。
「ありがとうございます」
私何言ってんだろう。
なんでお礼なんてしてるのだろう。
誠也さんはニコッと笑った。
幻かと思った。
あの誠也さんが笑った。
その瞬間、私の気持ちは大きく跳ねた。